亜人間都市『語りえぬもの』インタビュー 03
〈出演〉本田百音
聞き手:朝倉憩
2017年9月18日 新宿区内稽古場
『語りえぬもの』ドキュメント、インタビューシリーズ。
インタビュー第3弾は、出演者の本田百音さん。
出演者の中では最年少である本田さん。
初参加となる亜人間都市の創作の場で、彼女は何を思うのでしょうか。
本田 百音(ホンダ モネ)
1996年生まれ、北海道旭川市出身
大学入学後より早稲田大学の演劇サークル「劇団木霊」に所属し、演劇活動を始める。出演歴に劇団木霊新人公演『full』, 早稲田大学演劇倶楽部新人企画『イイオンナ』, 虚大空間『血を覚ますな』など。亜人間都市にはワークショップオーディションを通して出演が決定。今回初参加となる。
「2歳からやってきたことが今に繋がっているっていう気がしてて」
──まず本田さんの演劇との関わりみたいなものをお伺いできたらと思います。今は大学の演劇サークルに所属されているとのことですが、そもそもどういう経緯で演劇を始めたのでしょうか?
私は元々はクラシックバレエをやってきて、小さい頃からずっとホントにそれしかないみたいな感じで、野球少年があったらバレエ少女みたいな、それくらい集中してバレエをやってたんですね。小中学校のときはコンクールに出たりして、人より少し回れたり飛べたりするのに優越感みたいなのを見出してました(笑)
でも高校生くらいから、自分より回れたり飛べたりする人が出てきて。あと自分は背が低いのがネックだったり、体型も、先生に痩せろ痩せろって言われ続けたりするくらいで。勧められておからダイエットとかやってみたけど、なかなか理想のものにならない(笑) 体型だけじゃなくて、筋肉のつき方とか、あまり綺麗に付かないみたいで。そういうのがあってか分からないけど、レッスン中にバリエーションをやる機会があって、『ジゼル』っていう全幕もののうちの一幕で、主人公のジゼルは心臓病のある不幸な子なんですけど、そういうのを揶揄(?) したみたいな表情を入れてみようかなって思って。つまりここは楽しく踊らなきゃいけないところなんだけど、そこでお客さんにはアレって思わせたら面白いんじゃないかって思って、やってみたら、先生に止められて。「それは違うかな」と言われて。それで「あ、違うのか」て思って。そういうところから、自分がバレエとその時やってみたいことっていうのとの齟齬が生まれ始めたんです。
あと、そのころ高校でダンス部もやっていたんですね。やったことがない人たちが集まって作った部で、ジャンルとかもなく、むしろ皆んなでイチから作ろう、みたいな。でもそれがすごく楽しかったんですよね。ある時、オーケストラを背に踊らせてくれるような大きいイベントに参加することになって、そこで自分で演出したものがお客さんにウケたりしたときに「めっちゃおもろいやんこれ!」て思ったりして。
そういうのが同時に起こったから、型に捉われないでできるものがしたくなって。なんだろうって考えてたですけど、演劇なのかなって思って。でも当時は演劇っていうものを全く知らなかったから、国語便覧で調べたりした(笑)
──ダンスよりも自由なことができそうと思ったのでしょうか?
そうですね。まず言葉が入るから、自由度が増えるのかなって。あとダンス部のダンスは、地域の人に見せるような活動が多くて、そういう方たちを楽しませるものだったから、分かりやすくしなきゃっていうのがあって。でも演劇はどうなんだろう? っていうのが、そのころは未知なものだったんで、まずどんなものか知りたいって思って、大学では演劇サークルに入りたいって漠然と思ってて、それで演劇を始めました。
──実際やってみてどうですか? 演劇だからできる、というようなものはありましたか?
ありました。例えば、バレエは型をピシっと見せるものだけど、演劇はステージごとに変えてみたら、反応も変わったりして、そういうのは凄く面白い。演劇についてはまだまだ分からない部分は多いですが、追求していきたい欲があります。バレエほどはそれが分かりやすいものではないからかな。コンクールで1位になった子を見て「確かにな」なんて思うのは、演劇では起こらないから。でも一方で、最近は型があるものとして能をやってみたりして。そういうのに魅力を持ち始めたりしてて。私はどこに進んでるんだろうっていう(笑)
──まだまだ模索中ですね。
そうですね。模索中です。
──そんな本田さんは、亜人間都市にはどういう経緯で参加されたんですか?
演劇を知りたくって、いろんな演劇を経験してみたかったんです。それであるとき、大学でチラシを見かけて。男の人の顔が断片化されているっていう。
──『かもめ-越境する-』のチラシですね。
そうです「かもめ」の。そのとき、これは普通の演劇と違うぞ、て思って。絶対普通なことやらないだろコレ! て思ったんですよね(笑) 結局その時の公演は見れなかったんですけど、亜人間都市の名前は覚えてて。それで春にツイッターでワークショップ参加者募集のツイートを見かけて参加して、それがあって今回の公演に出る事になりました。だから作品を見たことはなかったんですよね。
──実際こうして作品を作り始めてみて、どうですか? いまどんなことを思いながら稽古をしていますか?
『かもめ-越境する-』公演チラシ
そうですね……例えば、私がいま喋りながら口元を触っているみたいな、言葉を喋っているときに連動しているものを使って作るっていうか、脳と体が連動している感じというか……そういうのはダンスとは全然違うなって思ったりします。あと一方で、役と、それをやっている私が違っている。ダンスではこういう型をやんなきゃって意識だけど、ここだと、むしろ「やろう」ってしたらダメになって。あとは例えば、ダンスのときは、見せる人にわかりやすくしなきゃっていう意識でやっていたけど……こっちではその……
なんというか……言葉にするのが、苦手だな、私は(笑) すみません。
昔からそうなんですよね。さっきも、演劇を始める理由を「バレエで怒られたから」みたいに言ったけど、ホントにそうなのか? っていう。いまの私が勝手に言葉にして、そういうものにしてしまってるだけなんじゃないかとか、そういうのを思うことが良くあります。
──いえいえ、重要な事だと思います。
うーん。上手く言えないですスミマセン。
とりあえず、私は演劇経験がそんなに長くはないけれど、これまで演劇でやるときは「役になりきる」っていうのが良いのかなって思ってきたんだけど、今回の稽古ではそういうのとは全然別の視点があって。与えられている課題が今までやったことのないもので、能とかもそうだったんですけど、やったことがないっていうのがやっぱり楽しいです。
それに、ここでやっている動きは、これまで経験としてやってきたことが入っているっていうか。例えば手の形一つとっても、私はついバレエっぽい形になってしまうんですけど、そういうのは他の出演者の方とは違うわけじゃないですか。それを表現として出していけるっていうのは、2歳からやってきたことが今に繋がっているっていう気がしてて、いい意味で「やってて良かった」って思えました。
──なるほど。色々なものを得られたんですね。
はい。俳優は役に入り込むだけじゃないんだ、ていうのに気がつけたのは、本当に大きな発見です。キャラクターがいて、それを語る私がいる、ていうのがすごく、経験した事のない演劇で、すごく面白いと思っています。戯曲も、身体も、その有り様が全然違うんですよね。やっている身としては普通の演劇と同じことをしているような気もするんですけど、他の人の演技を見ていて、つまり受け取る側からすると、感じるものは普通の演劇とは明らかに違っていて。そこで何が違うのかは全然わからないんですけどね……なのでこの作品、普通に観客として見てみたいって思ったりします(笑)
──ありがとうございます。それでは最後に、お客さんに向けて一言いただけますか?
うーん……いまはやることで精一杯なので、こうと上手くは言えないのですが。とりあえず、力まずに見て欲しいと思います。とにかく頑張るので、よろしくお願いします。