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東京ノート インタビュー

渕上・長沼

亜人間都市『東京ノート』座組のみなさんへのインタビューシリーズ。

第1弾は、出演の渕上夏帆さん、長沼航さんです!

(聞き手・構成​ 冨田粥)

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写真左から渕上夏帆さん、長沼航さん

--まず、お二人の出自について、簡単にお伺いできますか?


渕上:私は茨城県水戸市で育ち、9歳のときに演劇を観に行ってなんじゃこれってなって、10歳のときにお芝居を始めました。それからずっと地元でのらりくらりやって、18歳で東京に出てきました。大学でも演劇サークルを1年やって、サークルは1年で辞めちゃうんだけど、それからもずっと演劇を続けてやってます。それから、藏下くんと二人芝居やったり、演劇の学校行ったりとかいろいろやって今に至ります。

 

長沼:僕は横浜生まれ横浜育ちで、小さい頃、おじいちゃんおばあちゃん家にあるゴミ箱を麺棒で叩いて壊すくらい太鼓がやりたかったんですよ。で、小学校3年生から入れるマーチングバンドがあったんですけど、いろいろあって管楽器を始めて、チューバとユーフォニウムを4年間吹いてました。中学校では、練習したくないから科学部に入って、その片手間でゴスペルをやってました。それから、高校に入って吹奏楽をやるってなって、打楽器を始めて、高校大学ずっと吹奏楽をやってるんですけど、演劇と出会ってしまって、今に至ります。

 

--長沼さんは今回初めて俳優をされるそうですね。演じられてみていかがですか?

 

長沼:去年の5月に亜人間都市でやっていたワークショップをTwitterで見かけて、参加したらおもしろくて、そのあと黒木さんに公演に誘われて、とりあえずやってみるか!と一歩踏み出したんですが……魔境でした(笑)。
そのワークショップのときに、「役を担う」みたいな話をしたんですよ。そんなことを今も考えたりするんですけど、でも今回は役が一つあって、それに対するわけじゃないので、とりあえず、僕は「台詞を言う」ということに焦点を置いてます。ただ、『東京ノート』より前に出たワークショップ公演とかっていう、今までの少ない経験の中でやってきた、台詞を言うための少ない回路みたいなのが、『東京ノート』では全然通用しないっていうのがあって。なので今は、台詞を言うために自分がどうあるかみたいのをずっと考えなきゃいけないなっていうことをすごい思いますね。僕は割と台詞を全部「言えちゃう」んですよ。あんなに喋る役の台詞がふつうに言えてるのかわからないまま発話してて、そこに困りが生じてる。

 

渕上:でも、言えちゃうものは言った後の空気をどう回収するかが大事な気がする。「ふつう言語化しなくない?」っていう台詞は多くて、だから、私もどうしたら言えるのかって思ってました。でも今は、言葉では言ってないのかもな、っていう気持ちにして、身体で表してるというか、気持ちの中の言葉をどう身体で言うか、だなって思ってます。ほんとは、この登場人物はこの台詞を言ってないかもしれない、でも身体の状態はそういう気持ちでいるから、それを言葉に乗せたらどうなるかなっていうのをちょっとやってみたいなって思う。

 

--『東京ノート』を観たことはありましたか?

 

長沼:ないです。

 

渕上:あたしもない。読んだこともなかった。

 

長沼:僕も読んだこともなかった。

 

--では、読んでみてどうでしたか?

 

長沼:とりあえず、最初はすごい難しいなと思って。上演を見てればたぶんわかるんだけど、読むとどうすればいいのかわかんない。平田オリザさんの現代口語演劇っぽい演出手法であっても、おれにはぜんぜん作れなさそうだなって思って。どうしていいかわかんないけど、上演はしなきゃいけないから、がんばらなければいけないと思わせられてます、常に。僕は、割と共通点のある役なんですよね。役というか、台詞を担当している登場人物たちが、相手の内側にけっこう入っていくことでコミュニケーション進めるみたいなタイプなんですね。対して僕は、人間がどうコミュニケーションするかみたいなのを考えてる。
『東京ノート』の戯曲の中に、家族に対して「久々に会うと難しいんだよな、話すの」っていう台詞があるんです。それはコミュニケーションが取れてないっていうよりは、みんな自分なりの方法を持ってて、それでうまく乗り越えようとしてんだけど、でも、そのズレ、歪みが登場人物の誰かに出ちゃってるみたいな、なんかそういうことかもって思うんです。そういうことを演技に活かそうと思って活かしてる部分もあります。
でも、いざ自分でこう上演するための作戦を練ろうと思いうと、こう途端に森に迷い込んで、ガタガタ震えて、気づいたら朝(笑) で、また稽古が始まって、夕方終わって、でまた夜1人で考えてガタガタ震えてここはどこって言って、ていうのを繰り返して、で、ちょっとずつ前進する、て感じです。

 

渕上:もともと私は、突飛な出来事とか、劇の中に用意された悲劇があってそれを乗り越えてっていう、セオリーみたいなのを好んでいて。ドラマチックな。『東京ノート』にはそれがないんだけど、日常の中に闇が、闇って言うとちょっと大げさだけど、ちょっと悲しくなるようなことが何個もあったりとかする。日常の中にそういう落とし穴があるのが、すごい上手いしおもしろいと思って。最初はそれだけだったんだけど、自分の役が、けっこう会話の相手が戦争に行くって人ばかりで、最近、こんな気持ちをする人をほんとに1人でもいいからなくしたいって思ったの。強い祈りでやってる(笑)。読んでるときって通過しちゃうから、そんな気持ちとかぜんぜん考えてなかったけど、いざやってみて、そういう人をなくしたいなって思いました。
ピースフルって感じ、まじで。ピースフル物語だから見にきてほしいです。

 

--稽古が始まった頃から時間を重ねてきて、考えが変わったりしたことはありますか?

 

長沼:僕は最初、東京ノートを戯曲のままやりたい気持ちもあるけど、もっと壊したい気持ちもあるから、それをぶつけていきたいなと思っていました。あとは、それとは別に、演技のことを考えたい、ということもありました。それはよく言われることで、結局、演劇の批評とかが劇作や演出に寄ってしまって、演技のことについて語られないけど、自分が演劇を観てて演技のことについて語れないなと思ったから、とりあえずれやればなんかわかるかと思って、ていうのがあるんです。そういうことを思っていたから、東京ノートをどうやりたいとかは、ちょっともう考えてられなかった。
最初の頃から黒木さんが「どうやって自分が舞台の上に立ちたいのか」みたいな話をずっとしてて、なんでこの人この話ずっとするんだろうって思ってたんです(笑) でも、年明けくらいから、あ、そういうことだったのかっていうのがなんとなくみえてきて、だから今は、自分が舞台の上に立つための芯みたいなものをね、3月の公演までに見つけるっていうのが、やらなければいけないことだし、目標だし意気込みです。

 

渕上:私は、これまで自分が役目をもらった役とかは、突飛なキャラクターなことがなかったんですね、あまり。「THE演劇」みたいなのもけっこうやってきたし。『東京ノート』にも変な人はいっぱい出てくるけど、でも「一発屋!」とか「刺激を与える人物!」とかそういう「エネルギーを持ってドン!」みたいなのじゃない。だから、すごい丁寧に土台を作り上げられる人になりたいなって思って。普遍を重ねて、物語の軸みたいなもの、土台をつくれるようになりたいって思ったの。
ていうのは、今回、初めてってくらい、自分が年上のポジションなんですよね。今までいちばんチビで、もう好き勝手やっていいよみたいなことが多くて。劇の中でも、けっこうそういう役割、刺激物みたいなのが多かったし。でも、今回違うぞ、大人やぞって思って(笑) 今回の座組を見て、お姉ちゃん、お母さんくらいでいたいなって思ったの。そういう懐の深さがさ、芝居にいい風に出ないかなって、出るようになりたいなって思って。懐ないんだけど!(笑) だから、懐深い芝居をしたい。私は。
で、最初の頃とかは、それって人のためだけだなって思ってたんですよね。もう歳も上だし、人がやりやすいようにやってあげられるように、自分はなろうって。でも、それって、回り回ってけっこう自分に返ってくるっていうか、自分のためでもあるなって最近すごい思ってます。他人のためにやってたことなんだけど、自分がやりやすくなるんだなあ、って。
好き勝手やる変な人のキャラもいっぱいあるし、みんないろいろ考えてきて、作戦練っていろいろ持ってきてやってたりして、それからもらえることがすごい多くなったから、いいなって。だからみんなどんどんもっと遊べばいいなって思ってます。

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渕上夏帆 
1994年8月23日に誕生。9歳のとき水戸芸術館で演劇と出会い、演劇活動を始める。近年は鐘下辰男氏の作品に役者として参加。2015年に藏下右京×渕上夏帆 二人芝居(下北ウェーブ2017に選出)を結成。ユニットでは出演・企画・演出、たまに脚本もやる。メキシコに行きたい。

長沼航 
大学3年生です。小学校からマーチングとかゴスペルとか吹奏楽とか音楽を色々やってきたんですが、大学1年の秋頃から演劇にハマり最終的に舞台の上にたどり着きました。ちなみに、散策者という団体のメンバーです。

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